野村胡堂
野村胡堂 · 日语
野村胡堂 · 日语
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原文 (日语)
吉田首相が「銭形平次」を読むとか読まないとかで、かなりうるさい問題を巻き起こした。吉田首相にとっては、随分迷惑なことであったに違いないが、「銭形平次」にとって、冷やかしの種にはなったが、良い宣伝にもなったことは確かである。かつて二十世紀のはじめの頃、ドイツで素晴らしい人気を博した、美しい歌い手のジェラルディン・ファーラーが、時の皇太子(後のカイゼル)と浮名を流し、一時は大変な評判になったことがあるが、その噂が下火になった時、新聞記者の臆面もないのが、その真相を訊ねると、ファーラー少しも騒がず「確かに宣伝にはなったワ」と軽くいなしたという欧羅巴交際社会の一つの話がある。 銭形平次に関する噂も、吉田首相は迷惑をしたことであろうが、私にとっては、ファーラーくらいの軽い気持になって一向差支えはあるまいと思う。吉田首相にしても、毎朝有難いお経を読むとか、ジイドの『狭き門』を愛読するとか、ありそうもない噂を立てられるより「銭形平次」の方が、どんなに気が楽かもわからないのである。 私はある結婚の披露式で、吉田首相に一度逢ったことがある。その印象によれば、少し皮肉っぽいが、座談も巧みで、なかなか好感の
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