野村胡堂
野村胡堂 · 日语
野村胡堂 · 日语
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原文 (日语)
「親分、梅はお嫌ひかな」 「へえ?」 錢形平次も驚きました。相手は町内でも人に立てられる三好屋の隱居、十徳まがひの被布かなんか着て、雜俳に凝つて居ようといふ仁體ですが、話が不意だつたので、平次はツイ梅干を聯想せずには居られなかつたのです。 「梅の花ぢやよ、――巣鴨のさる御屋敷の庭に、大層見事な梅の古木がある。この二三日は丁度盛りで、時には鶯も來るさうぢや。場所が場所だから、俗も風雅も一向寄り付かない。御屋敷の新造が解つた方で、――三好屋の知合ひで、風流氣のある方があつたら、是非御一緒に――と斯う言ふのぢや、何うだな、八五郎兄哥」 三好屋の隱居は、相變らず日向に寢そべつて、自分の身體一つを持て餘して居るガラツ八の八五郎に聲を掛けました。 「梅の花といふと、花合せの赤丹を思ひ出すやうな人間に、風流氣なんかあるわけはありません。御隱居さん、無駄ですよ」 平次は苦笑ひをして居ります。 「お言葉だがネ親分、梅の花なんざ、小汚ねえばかりで面白くも何ともねえが、御馳走と新造付なら考へるぜ」 「馬鹿野郎、何て口の利きやうだ」 「いゝやね、親分、八兄哥は正直だ、――それに向うぢや、平次親分を伴れて來て下
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