野村胡堂
野村胡堂 · 日语
野村胡堂 · 日语
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原文 (日语)
「親分、飯田町の上總屋が死んださうですね」 ガラツ八の八五郎は、またニユースを一つ嗅ぎ出して來ました。江戸の町々がすつかり青葉に綴られて、時鳥と初鰹が江戸ツ子の詩情と味覺をそゝる頃のことです。 「上總屋が死んだところで俺の知つたことぢやないよ」 錢形平次は丹精甲斐もない朝顏の苗を鉢に上げて、八五郎の話には身が入りさうもありません。 「ところが、聞き捨てにならないことがあるんですよ、親分」 「上總屋の死に樣が怪しいとでも言ふのか」 「二年も前から癰を患つて居たつていふから、人手にかゝつて死んだとすれば、町内の外科が下手人見たいなもので――」 「落し話を聽いちや居ない、――何が聞き捨てにならないんだ」 平次は漸く朝顏から注意を外らせました。 「金ですよ、親分。上總屋音次郎が、鬼と言はれ乍ら、一代にどれほどの金を拵へたと思ひます?」 ガラツ八はなか/\の話術家です。平次が滅多な事件に手を染めないのを知つて、かう乘出さずには居られないやうに持ちかけるのでした。 「五六萬兩かな、――有るやうでないのは何んとかだと言ふから、精々三萬兩ぐらゐのところかな」 「さう思ふでせう。ね、親分」 「イヤにニヤ
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