野村胡堂
野村胡堂 · 日语
野村胡堂 · 日语
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原文 (日语)
「親分、向島の藤屋の寮で、今日生き葬ひがあるさうですね」 ガラツ八の八五郎は、相變らず鼻をヒクヒクさせながらやつて來ました。 「俺はこれから、その生き葬ひへ出かけるところよ。お前も一緒に行つて見ないか」 錢形平次は嗜みの紙入を懷ろに落して、腰へ煙草入を差すと立上がりました。 「御免蒙りませう。親分のお供は有難いが、あつしは生き葬ひを出す奴と、死に金を貯める奴が大嫌ひで、へツ、へツ」 「いやな笑ひやうだな。どうせどつちにも縁はあるめえ」 「へツ、仰せの通りで。あつしは江戸中の奴がびつくりするほど借金を殘して死にてえ」 「その八五郎にビツクリするほど金を貸す奴がありや宜いが」 「違げえねエ」 相變らず無駄ばかり言ふ二人でした。 「金があつて暇があつて死に度くない奴が考へ出したことだらうが、生きてるうちに葬ひを出すといふのは考へて見ると妙なもんだね、――近頃は矢鱈に流行るんだが――」 平次はつく/″\さう言ふのです。江戸の文化も漸く爛熟しかけて、町人階級に金があると、通にも粹にも縁のないのが、せめて生き葬ひを出して馬鹿騷ぎをし、自分の人氣を試して見るのが面白かつたのでせう。 「親分はまた何ん
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