野村胡堂
野村胡堂 · 日语
野村胡堂 · 日语
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原文 (日语)
「親分、變なことがあるんだが――」 「お前に言はせると、世の中のことは皆んな變だよ。角の荒物屋のお清坊が、八五郎に渡りをつけずに嫁に行くのも變なら、松永町の尼寺の猫の子にさかりが付くのも變――」 「止して下さいよ、そんな事を、見つともない」 錢形平次と子分の八五郎は、相變らず斯んなトボケた調子で話を運ぶのでした。平次の戀女房のお靜は、我慢がなり兼ねた樣子で、笑ひを噛み殺し乍ら、お勝手へ逃避してしまひました。 「何を言ふんだ、そいつは皆んなお前が持つて來たネタぢやないか。今度は何處の新造が八を口説いたんだ」 「そんな氣樂な話ぢやありませんよ。三河町の吉田屋彦七――親分も御存じでせう」 「うん、知つてゐるとも、大層な分限だといふことだな。それがどうした」 「三河町の半分は持つてゐるだろうといふ大地主ですよ。其の吉田屋の總領の彦次郎といふ好い息子が勞症で死んだのは去年の暮だ――もう半歳になりますね」 障子の外の清々しい青葉を眺め乍ら、八五郎は不器用な指などを折ります。 「それがどうした、化けてでも出たか」 「そんな事なら驚きやしませんがね。町内の評判息子で、孔子樣の申し子のやうな若旦那が死ん
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