野村胡堂
野村胡堂 · 日语
野村胡堂 · 日语
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原文 (日语)
「考へて見ると不思議なものぢやありませんか。ね、親分」 八五郎はいきなり妙なことを言ひ出すのでした。明神下の錢形平次の家の晝下がり、煎餅のお盆を空つぽにして、豆板を三四枚平らげて、出殼しの茶を二た土瓶あけて、さてと言つた調子で話を始めるのです。 「全く不思議だよ。晝飯が濟んだばかりの腹へ、よくもさう雜物が入つたものだと思ふと、俺は不思議でたまらねえ」 平次は八五郎の話をはぐらかして、感に堪へた顏をするのでした。 「そんな話ぢやありませんよ。あつしの不思議がつて居るのは、江戸中の人間が腹の中で、いろんな事を考へて居るのが、若しこの眼で見えるものなら、さぞ面白からうと言つたやうなことで――」 「あの娘が何を考へて居るか、それが知り度いといふ話だらう」 「まア、そんなことで」 八五郎は顎を撫でたり額を叩いたりするのです。 「安心しなよ、お前のことなんか考へちや居ないから」 「有難い仕合せで、へツ」 「誰が何を考へてゐるか、一向わからないところが面白いのさ。こいつが皆んな眼に見えたひにや、大變なことになるぜ、――第一こちとらの稼業は上がつたりさ」 「大の男の腹の中が、哀れな戀心で一パイで、可愛
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