野村胡堂
野村胡堂 · 日语
野村胡堂 · 日语
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原文 (日语)
「お早やうございます」 花は散つたが、まだ申分なく春らしい薄靄のかゝつた或朝、ガラツ八の八五郎は、これも存分に機嫌の良い顏を、明神下の平次の家へ持込んで來ました。 「大層寢起きが良いな、八。挨拶だつて尋常だし、月代だつて、當つたばかりぢやないか、何つかに結構な婿の口でもあつたのかえ」 平次は煎餅になつた座布團を滑らしてやつて、ぬるい茶を注いでやつたりするのです。 「婿の口はありませんが、岡惚れの口がありますよ。新色と申し上げてえが、まだ當つて見たわけぢや無いから」 「ヌケヌケした野郎だ」 「これから脈を引いて見るんだから、挨拶だつてぞんざいぢや惡いし、月代位は當つて置かなきア――」 「元金が掛らねえことばかり考へてやがる、――ところで、その新惚れてえのは何處のお乳母さんだえ」 「へツ、イキの良い人間の新造ですよ、親分」 「當り前だ、おコンコンの化けた新造だつた日にや、第一俺が不承知だ」 「ま、はぐらかさないで、聽いて下さいよ、斯ういふわけで」 「大層改まつたね」 でも、平次は神妙に、八五郎の話を聽く氣になりました。何んか深いわけがありさうな氣がしたのです。 「昨日向島で散々毛虫を眺めて
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