野村胡堂
野村胡堂 · 日语
野村胡堂 · 日语
首段预览
原文 (日语)
「羨ましい野郎があるもんですね、親分」 夏の夜の縁先、危い縁臺を持ち出して、蚊を叩き乍ら、八五郎は斯んなことを言ふのです。 「お前でも人を羨ましがることがあるのか、淺ましくなりやがつたな」 錢形平次は呑氣な心持ちで相手になつて居ります。八五郎が急に慾が出て、角の地面が欲しくなる氣遣ひは無いと、多寡をくゝつてゐる樣子です。 「相手は駒形の伊三郎の野郎ですがね」 「取り拔け無盡が當つたのか、それとも伊三郎はちよいと良い男だから、大屋の小町娘にでも思ひ付かれたとでもいふのか」 平次は相變らず氣が無ささうです。秋近い蚊は、三春駒のやうに達者で、此邊は水にも藪にも縁があるせゐか、叩いても叩いてもやつて來るのです。 「そんな世間並の話なんか、羨ましくも何んともありませんよ、伊三郎の野郎のところへ、馴染の女郎が無事に年が明けて、轉げ込んで來た相で、巴屋の友鶴てんで、二十七だと振れ込んでますが、請合三つ位はサバを讀んでますね」 「そんなのが、羨ましいのか、お前は? 小皺が寄るまで苦海に勤めて、長い間に身受けの相手もなく、貧乏な岡つ引のところへ轉げ込む女郎は、一體どんな代物だと思ふ」 「さうは言つても、
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