萩原朔太郎
萩原朔太郎 · 日语
萩原朔太郎 · 日语
首段预览
原文 (日语)
この頃になつて、僕は始めて芥川君の全集を通讀した。ずゐぶん僕は、生前に於て氏と議論をし、時には爭鬪的にまで、意見の相違を鬪はしたりした。だが實際のところを告白すると、僕はあまり多く彼の作品を讀んでゐなかつたのだ。そこで二言目には、芥川君から手きびしく反撃された。「君は僕の作品をちつとも讀んでゐないぢやないか。」「君がもし、いつか僕の全集をよんでくれたらなあ!」 實際、僕は芥川君と交際しながら、しかもその忠實の讀者でなかつたことを、いつも心に恥ぢ、身にひけて感じてゐた。だがその理由は、決して僕が彼の作品を好まなかつたからでない。否むしろ、芥川龍之介と谷崎潤一郎とは、僕が小説について鑑賞し得る、唯一の二人だけの作家であつた。一體言つて、僕は小説といふ文學が甚だ嫌ひだ。僕にとつて讀みたいものは、文學中で「詩」と「評論」の二つしかない。小説といふものはだらだらして、くだらないことを細々と書き立てるので、讀むからに退屈であり、僕のやうな結論を急ぐ性急者には、てんでのつけから讀む氣がしない文學である。特に就中、身邊記事のくだらない出來事を、茶呑み婆さんの繰言みたいに、絮々細々と――文壇の術語で言へ
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