萩原朔太郎
萩原朔太郎 · 日语
萩原朔太郎 · 日语
首段预览
原文 (日语)
鎌倉へうつつてからは、毎日浪の音をきくばかりでさむしい。訪問者も絶えて無いので何だか昔の厭人病者の物わびしい遁世生活を思ひます。西行といふ昔の詩人は、特別にかういふ生活の情趣を好んだらしい。「鴫立つ澤の秋の夕ぐれ」などといふ歌をよむと、昔の厭世主義者の詩境がよくわかる。しかしあれは茶の湯や禪味と關聯した「侘しさ」のあはれであつて、現代人たる僕等の氣分とはぴつたりしない。近代の厭人病者は、むしろ都會の雜鬧中に孤獨で居ることは好んでも、かういふ閑寂の自然の中に孤獨でゐることは好まないだらう。 しかし僕の厭人病も、年と共に益ひどくなつて行つて、今では病がコーコーに達した感がある。訪問者のないのは此方から逃げてゐるからで、自分で孤獨を求めてゐるやうなものである。尤も「人嫌ひ」は一つの惰性的の習慣で、つまり交際がおつくふになるのである。これにつけても子供の教育は大切で、早くから人に慣れるやうに交際社會へ出してやらぬと、皆私のやうな變人になつてしまふ。 田端にゐた時のことを思ひ出す。今からみると、あの頃の身邊は可成賑やかだつた。尤も田端といふ所は、妙に空氣がしづんでゐて、禪寺の古沼みたいな感じがす
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