萩原朔太郎
萩原朔太郎 · 日语
萩原朔太郎 · 日语
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原文 (日语)
白でないものは黒である。もし白でも黒でもないものは、中間の灰色でなければならない。これが論理の原則であり、我々の推理の方式は、いつでもこの前提の上に組みたてられる。 しかしながら多くの事實は、いつも人間の推理を裏切つてゐる。具體的なるすべての事實は、決して論理的であり得ない。特に我々の人格ほど、非論理的なものはないであらう。人格の實相は、實に矛盾そのものである。たとへばドストイエフスキイの著るしい特色は、變質者に特有なる非倫的・惡魔主義的の性向である。然るに彼の一面は、聖僧のやうに高潔で、處女のやうに純眞なる人道的な特質を有してゐる。故にこの一の人格は、惡でなく善でなく、白でもなく黒でもない。しからば善惡の中間たる、あいまいな灰色人物であるだらうか? 否、ドストイエフスキイの人格は、神と惡魔の著るしい對立から成立してゐる。そこには北極と南極とがある。そして兩極の調和たるべき、温帶地方といふものが全くない。即ち彼の人格は、白にして同時に黒、黒にして同時に白である。神と惡魔とは、いつも一の氣質の中に、或るふしぎな樣式で入り込みながら生棲してゐる。兩者は決して調和をせず、また妥協をもしてゐな
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