堀辰雄
堀辰雄 · 日语
堀辰雄 · 日语
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原文 (日语)
恢復期 堀辰雄 第一部 彼はすやすやと眠っているように見えた。――それは夜ふけの寝台車のなかであった。…… 突然、そういう彼が片目だけを無気味に開けた。 そうして自分の枕もとの懐中時計を取ろうとして、しきりにその手を動かしている。しかしその手は鉄のように重いのだ。まだその片目を除いた他の器官には数時間前に飲んだ眠り薬が作用しているらしいのである。そこで彼はあきらめたようにその片目を閉じてしまう。 が、しばらくすると、彼の手がひとりでに動き出した。さっきの命令がやっといまそれに達したかのように。そうしてそれがひとりで枕もとの懐中時計を手捜りしている。その動作が今度は逆に、彼自身ほとんど忘れかけていたさっきの命令を彼に思い出させる。 「まだ三時半だな……」 彼はそうつぶやくと、一つ咳をする。するとまた咳が出る。そうしてその咳はなかなか止みそうもなくなる。まだ一時間ばかり早いけれども仕方がない。もう起きてしまおうと彼は思った。――彼は上衣に手をとおすために身もだえするような恰好をする。やっとそれを着てしまうと、半年近くも寝間着でばかり生活していた彼には、どうもそれが身体にうまく合わない。ネク
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