堀辰雄
堀辰雄 · 日语
堀辰雄 · 日语
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原文 (日语)
リルケの「M・L・ブリッゲの手記」を譯してゐると、神西清がきて、いきなり今晩中に何でもいいから自分宛に手紙を書いてくれと言ふのだ。何にするんだと訊いたら、それでもつて「スタヴロギンの告白」の新刊批評に代へたいと云ふのだ。何でもいいなら書くよ、と承諾した。それから今度一緒に譯すジィドの「田園交響樂」の打合はせなどして、神西は十時頃歸つていつた。さあ、一人になつたから、何でも手あたり次第に書いていつて、いい加減の枚數になつたらやめるつもりだ。 僕が丁度いま、近いうちに詩の雜誌として再刊することになつてゐる「四季」のために飜譯しかけてゐる「M・L・ブリッゲの手記」は、その「田園交響樂」と妙な縁があるのだ。一月ばかり前に、僕はジャアマン・ベエカリイで或る男とはじめて會つた。その男はそのとき、僕のところによく遊びにくるT君と一緒のテエブルにゐた。店が混んでゐで他に空いたテエブルがなかつたので、僕もそのテエブルに割り込ませて貰つた。しかし始めて會ふ人にはどうも人見知りをする癖があるので、僕は默つて、買つてきたばかりの獨逸譯の「田園交響樂」をいぢくつてゐた。するとその知らない男はそれがジィドの本だと
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