牧野信一
牧野信一 · 日语
牧野信一 · 日语
首段预览
原文 (日语)
「登志さん、果物でも持つて行つたらどうなの、雑誌ばかり読んでゐないで……」 ナイフや皿の用意をととのへながら、母は登志子を促した。 「キクに言つてよ。あの集りの中へ這入つて行くのは、あたし何だか気まりがわるいのよ、あたしが行くと皆が変に黙つてしまふんですもの……」 「お前さんが、あんまり気どつてゐるからぢやないの。」 「まあ、ひどいわ、母さんたら……」 二人が、そんなことを言ひ合つてゐると、やがて離室の窓から、 「登志子、登志子――ちよつと来て呉れないか?」 と兄が呼んだ。 「何あに……?」 「好いから、ちよつと来て呉れよ。」 ――兄の部屋には、今夜もまた七八人もの友達が集つてゐた。兄と共に、一年前に文科大学を卒へた者や、未だ文科の学生である幾人かが、このごろ毎晩のやうに兄の部屋に集つて、文学の同人雑誌を発行する相談で夜を更してゐた。――その晩も、明るいうちから彼等はさかんに議論か何かをたたかはせてゐるらしかつたが、そのうちに、やがて、一同は疲れて眠つてでもしまつたかのやうに、森と静まつてゐた。そして、折々、 「そんなの駄目だよ。」とか「それは、あんまり大げさだ。」 などと言つて、わつ
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