直木三十五
直木三十五 · japonés
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Original (japonés)
第一期 僕は、僕の母の胎内にゐるとき、お臍の穴から、僕の生れる家の中を、覗いてみて、 「こいつは、いけねえ」 と、思つた。頭の禿げかゝつた親爺と、それに相当した婆とが、薄暗くつて、小汚く、恐ろしく小さい家の中に、坐つてゐるのである。だが、神様から、こゝへ生れて出ろと、云はれたのだから、 「仕方がねえや」 と、覚悟をしたが、その時から、貧乏には慣れてゐる。 僕の母親は東京にゐるが、父は、大阪にゐる。何んと云つても出て来ない。物好きな読者があるなら、僕の父の家を見に行くといゝ。さう、矢鱈に存在してゐる家ではない。大阪南区内安堂寺町二丁目、交番を西へ行つて、茶商と、おもち屋との間の露次を入ると、井戸のすぐ脇にあるのが、それである。二畳の玄関――それから、二畳半の奥座敷。それつきりである。 いくら金持でも、物好きでも、合せて四畳半しか無い家には、余り住むことを欲しないものである。父は今年八十二歳になるが、五十年間、古着屋をして、かういふ家にゐたのである。 だから、僕は、貧乏に慣れてゐて、貧乏の苦しさといふものを知らない。母親が、僕が、いくつの齢だつたらう――鶏卵を見せて、 「宗一、これが卵やで
直木三十五
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