井上円了 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
エー、今晩は、臨時のお好みに従いまして、御注文のとおり妖怪談を演説することになりました。なにぶん世間では、妖怪学は私の専有物であるかのごとく評判いたしまして、いずれへ参りましても、話を頼むということになると、どうか妖怪の談をしてもらいたいと申します。先年のことであります。私がある所へ参りました。その要件というのは、すなわち哲学館大学の資金募集のために出張いたしましたのにもかかわらず、「寄付話はやめて、どうか妖怪談をして願いたい」というのでございます。そこで私は、「今回、余が参りましたのは、演説をやるために来たのではありませぬ。寄付を願うために参りましたのだから」とお断りをいたしました。ところが彼らが言うには、「ここで妖怪談をして下さるならば、全員こぞって寄付に御賛成申すが、もし話して下さらぬならば、われわれも不本意ながら、御寄付にも賛成はできませぬ」と申したことがございますが、妖怪談というものは、さほどまでにおもしろいものではありませぬから、この辺のことはあらかじめ御承知を願っておきます。 さて、妖怪と申しますると、なにか幽霊かのように思われますが、決して一つや二つのものではありませぬ

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