今井邦子 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
瀧を見ることはたのしいことです。 瀧は私はどんな小さい瀧でも、たとへば行きずりに見るほどのものでも、必ず一寸立ち止まつてその水の音をきゝ、碎け落つる白泡を見て一瞬たのしい心になる程好きなのであります。 私は近年、夏を郷里の信濃下諏訪町のカメヤホテルといふ古風な旅館にすごす事に定つてしまひましたが、それはその家の人々が家族的に親切であるといふ事も大きい原因ですけれど、一つはその家の庭が昔から流行唄にうたはれた程よい庭であつて、その背景にすぐ後の諏訪大明神の森林、大木の欅の並み立つ深い森をとりいれて作られた、趣ふかい庭であるからです。 私は丁度其庭に直面した十五疊ほどの大きい座敷を毎年定つてとつておいて貰ふのですが、その庭の向ふに小さい瀧が落ちてゐます。そこには年古りた石燈籠があつて、瀧から落ちる水は眞夏の強い光を反射して、この年古りた石燈籠にキラ/\と影を投げます。私は讀書に飽きた時、一人つれ/″\なる時、この庭の向ふの小さい瀧の水を見てゐると飽きるといふことがありません。夜は締め切つた雨戸をこして、この瀧の音が夢に入るまで凉しい水の歌を奏でてくれます。 私は昨年の秋にはじめて日光に遊ん
今井邦子
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