上村松園 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
京の夏景色 上村松園 京都の街も古都というのはもう名ばかりで私の幼な頃と今とではまるで他処の国のように変ってしまってます。これは無理のないことで、電車が通り自動車が走りまわってあちこちに白っぽいビルデングが突立っている今になって、昔はと言っても仕様のないのは当りまえのことでしょう。加茂川にかかっている橋でも、あらかたは近代風なものに改められてしもうて、ただ三条の大橋だけが昔のままの形で残っているだけのことです。あの擬宝珠の橋とコンクリートのいかつい四条大橋とを較べて見たら時の流れというものの恐ろしい力が誰にも肯けましょう。私には三条の橋のような昔の風景がなつかしいには違いがありませんが、昔は昔今は今だと思うとります。私が五つ六つの頃結うたうしろとんぼなどという髪を結っている女の子は今は何処に行ったとて見ることは出来ないでしょう。ちか頃の女の子はみなおかっぱにして膝っきりの洋服を着ていますが、なかなか愛らしくて活溌で綺麗です。そうした女の子達を見ていると昔のつつをきゅうとしばったうしろとんぼの時代は、あれは何時のことだったのかと我れといぶかしく思うくらいなのですから。 でも、なつかしさは
上村松園
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