海野十三 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
地底戦車の怪人 海野十三 この物語は、西暦一千九百五十年に、はじまる。 すると、昭和の年号でいって、昭和二十五年にあたるわけである。 今年は、昭和十五年だから今から、丁度十年後のことだ、と思っていただきたい。 作者しるす 極南へ アメリカの貨物船アーク号は、大難航をつづけていた。 船は、あと一日で、目的の極地へつくはずになっていたが、あいにく今になって、猛烈な吹雪に見舞われ、船脚は、急にがたりとおちてしまった。この分では、とても、あと一日で、めざす極地の新フリスコ港に入るのはむずかしくなった。 なにしろ、極寒の地帯における吹雪ときたら、そのものすごいことは、ちょっと形容のことばが見つからないくらいだ。 時は今、極地一帯は、白夜といって、夜になっても太陽が沈まないで、ぼんやり明るい光がさしているのであったが、とつぜん一陣の風とともに、空は、墨をながしたように、まっくらになり、とたんに天から白いものがおちだしたかと思うと、まもなくあたりは白壁の中にぬりこめられたようになって、すぐ前にいる水夫の姿が、全く見えなくなり、階段がどこにあったか、ロープがどこに積んであったか、わけがわからなくなる。

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