海野十三 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
ねずみ色の雲が、ついに動きだした。 すごいうなり声をあげて、つめたい風が、吹きつけてきた。 ぐんぐんひろがる雲。 万年雪をいただいた連山の峰をめがけて、どどどッとおしよせてくる。 ぴかり。 黒雲の中、雷光が走る。青い竜がのたうちまわっているようだ。 雷雲はのびて、今や、最高峰の三角岳を、一のみにしそうだ。 おりしも雷鳴がおこって、天地もくずれるほどのひびきが、山々を、谷々をゆりうごかす。三角岳の頂上に建っている谷博士の研究所の塔の上に、ぴかぴかと火柱が立った。 つづいて、ごうごうと大雷鳴が、この山岳地帯の空気をひきさく。 黒雲はついに、全連峰をのみ、大烈風は万年雪をひらひらと吹きとばし、山ばなから岩石をもぎとった。 このとき、谷博士は、研究所の塔の下部にある広い実験室のまん中に、仁王立ちになって、気がおかしくなったように叫んでいる。 「雷よ、もっと落ちよ。もっと鳴れ。稲妻よ。もっとはげしく光れ。この塔を、電撃でうちこわしてもいいぞ。もっとはげしく、もっと強く、この塔に落ちかかれ」 博士は、腕をふり、怒号し、塔を見あげ、それから目を転じて、自分の前においてある大きなガラスの箱の中を見すえ

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