海野十三 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
問題の「諜報中継局Z85号」が、いかなる国家に属しているのか、それは今のところ詳かでない。 しかしこの諜報中継局が、アメリカの政治首都ワシントンと経済首都ニューヨークを含む地域内に潜伏していることだけは確言できる。そして局の位置は、たえず移動をつづけているようである。ある日の午後は、軍需倉庫の一隅にあるかと思えば、その翌日の早朝にエンパイヤハウスの三十七階の一室にあるという具合に、始終移動をつづけている。 その局には、アメリカ各地からの諜報が、ひっきりなしに集ってくる。その諜報は、アメリカの軍関係事件だの重要会談だの大ものから始まり、巷の民衆の声までを集録している。 その頃、この地域に、うつくしくてちょっと面白い花壜が流行した。その花壜は、壁にぺたり吸いつく花壜であった。釦が二つついていて、花壜の平な側を壁におしつけ、上の釦をぽすんと押すと、花壜は壁にぴたりと附着する。そうなった限り、大の男が花壜に手をかけて、汗を流して花壜を壁からはがそうとしても、決して離れない。 それを離すためには、下の釦をぽすんと押すしかない。そうすると花壜は石のように下に落ちていく。 この魔法じみた花壜は、要す

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