江戸川乱歩 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
しょうねんたんていだんのなかで、いちばんからだが大きくて力の強い井上一郎くんに、小学校三年生のルミちゃんという、かわいい妹がありました。そのルミちゃんが、ある夕がた、ちんどん屋のあとについて、町はずれのさびしい森の近くまで行ってしまったのです。 井上くんは、おかあさんにたのまれて、ちょうどそのとき、遊びに来ていた同じだんいんのノロちゃん(野呂一平くんのあだ名)とふたりで、方々さがしまわって、やっとルミちゃんを見つけましたが、ルミちゃんは、ちんどん屋のおじさんがおもしろいものを見せてやるというから、いっしょに行くのだといって、どうしても帰りません。 「きみたちにも見せてあげるから、いっしょにおいで。それはふしぎなおもしろいものだよ」 とんがりぼうしをかぶり、だぶだぶのどうけふくを着て、かおにはまっ白なおしろいをぬったちんどん屋が、やさしくいいました。 そして、三人は、町はずれの森の中の古い赤れんがのせいようかんへつれこまれたのです。みんなが、入口をはいってドアをしめると、中はまっ暗でした。 「あら、ちんどん屋さん、どこへ行ったの」 ルミちゃんがさけびました。しかし、なんの答もありません。

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