榎南謙一 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
お早うさん 昨夜の夢は? 故郷の庭には柘榴の花が散ってるだろう けさもまた やめて帰ろと思うたが 帯はあせたし 汽車賃なしではどうにもならぬ 爪をもがれた蟹のように 冷たい石畳みをヨチヨチと私たちは工場へはいる 今日もいちんち トタン塀の中で無自由だ! 渇いて 渇いて やりきれぬ トタン塀の外は たんぽぽが咲いて乳をながしたような上天気 町の活動小屋がラッパを吹いて廻るし 糸をつなぐ手がこんなにそわそわする 無理もない 娘十七八 いろんなことを考えるンだろ それに掃き溜めのない青春だもの 年中、蟹の横歩きそのままの立ち通しで 足はむくんで むくんで 夜は死んだようになってねむる 彼女の四年間の会社勤めは 何ンちゅうことだ――肋膜瘤! 棉ごみの中で 青春は八方ふさがり ニキビの吹き出た頬っぺたをつめたい窓硝子に寄せる ネクタイの連中は 朝ッぱらから花見に出かけたし たんぽぽの咲く花は命がけ癪だ 天井を突き抜ける轟音と その三層倍も湧きあがった棉ごみの中―― 見たか のみでもぶち込まねば 赤い血の出そうにもない襟首を―― のしかかる労働強化! 胸が痛くて血を吐いたが それでも帰れん、帰れん

翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
この著者の他の作品
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。