岡本かの子 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命をかけてわが眺めたり さくら花咲きに咲きたり諸立ちの棕梠春光にかがやくかたへ この山の樹樹のことごと芽ぐみたり桜のつぼみ稍ややにゆるむ ひつそりと欅大門とざしありひつそりと桜咲きてあるかも 丘の上の桜さく家の日あたりに啼きむつみ居る親豚子豚 ひともとの桜の幹につながれし若駒の瞳のうるめる愛し 淋しげに今年の春も咲くものか一樹は枯れしその傍の桜 春さればさくらさきけり花蔭の淀の浮木の苔も青めり ひえびえと咲きたわみたる桜花のしたひえびえとせまる肉体の感じ 散りかかり散りかかれども棕梠の葉に散る桜花ふぶき溜るとはせず ならび咲く桜の吹雪ぽぷらあの若芽の枝の枝ごとにかかる わが庭の桜日和の真昼なれ贈りこしこれのつやつや林檎 青森の林檎の箱ゆつやつやと取り出でてつきず桜花の樹のもと 林檎むく幅広ないふまさやけく咲き満てる桜花の影うつしたり 地震崩れそのままなれや石崖に枝垂れ桜は咲き枝垂れたり しんしんと桜花かこめる夜の家突としてぴあの鳴りいでにけり しんしんと桜花ふかき奥にいつぽんの道とほりたりわれひとり行く せちに行けかし春は桜の樹下みちかなしめりともせちに

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