岡本綺堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
能因法師 岡本綺堂 登場人物 能因法師 藤原節信 能因の弟子良因 花園少將 少將の奧園生 伏柴の加賀 陰陽師阿部正親 藤原時代。秋のなかば。 洛外の北嵯峨。能因法師の庵。 藁葺の二重家體にて、正面の上のかたに佛壇あり、その前に經卷をのせたる經机を置く。 佛壇につゞきて棚のやうなものを調へ、これに歌集または料紙箱、硯など色々あり、下のかたは壁にてその前に爐を設く。下のかた折曲りて竹の肱掛窓あり。家體の上のかたは奧の間のこゝろにて出入の襖あり。庭に面せる方は簾をたれたる半窓にて、窓の外には糸瓜のぶら下りし棚あり。庭の下のかたに低き垣の枝折戸、垣のほとりには秋草咲けり。垣の外には榎の大樹あり。うしろには森、丘、田畑など遠く見ゆ。 (主人の能因法師、四十餘歳、上のかたの窓より首を出してゐる。その顏は日に燬けて眞黒になつてゐる。弟子の良因は庭に降りて落葉をかいてゐる。鳥の聲きこゆ。) 良因 どうもひどい落葉だな。秋もだん/\に深くなつたとみえて、この頃は一日ごとに落葉が多くなつて來た。おゝ、鳥が頻りに鳴く。(空をみる。)けふは好い天氣だ。野遊びの人も澤山出たであらう。能因 (窓より聲をかける

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