小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
犬ころしが、はいってくるというので、犬を飼っている家では、かわいい犬を捕られてはたいへんだといって、畜犬票をもらってきてつけてやりました。 しかし、かわいそうなのは、宿なしの犬でありました。寒い晩も、あたたかい小舎があるのでないから、軒下や、森の中で、眠らなければなりません。また、だれも、畜犬票などをもらってきて、つけてくれるものがなかったのです。 勇ちゃんは、外を歩いているとき、いろいろの犬を見ました。首輪に、札のついているのは、どこを歩いていても、安心だから、べつになんとも思わなかったけれど、なかには、首輪のないもの、また、首輪はあっても、札のついていないものがありました。それらの犬たちは、捨てられたか、森や、空き家の中で生まれたかして、まったく飼い主のないものでありました。 しっかりした人間の助けを受けているものと、なんの助けもないものと、どちらがしあわせでありましょう? 「犬ころしに見つかったら、いつ捕まえられてしまうかしれない。」と、勇ちゃんは、札のない犬を見るとあわれに思いました。そして、そのたびに、クロのことが、心配でならなかったのでした。 勇ちゃんの、かわいがっているク
小川未明
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