小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
お花が、東京へ奉公にくるときに、姉さんはなにを妹に買ってやろうかと考えました。二人は遠く離れてしまわなければなりません。お花は、まだ見ないにぎやかな、美しいものや、楽しいことのたくさんある都へゆくことは、なんとなくうれしかったけれど、子供の時分から、親しんだ、林や、野や、自分の村に別れることが悲しかったのです。 姉は、かつて、自分も一度、都へいってみたいと心にあこがれたことがありました。しかし、ついに出る機会がなくてすぎてしまいました。そして、もう奉公に出るには、あまり年をとってしまったので、自分は、村に残って圃に出て、くわをとって働くことにいたしました。 「なにを妹に、買ってやったらいいだろう。」 姉は、ひとりで働きながら思ったのです。 たとえ、妹は、華やかな都へゆくのにしろ、家を離れるということは、姉にはさびしいことでした。そして知らぬところへいって、遠くみんなから別れて、一人で生活するということは、どんなにか、心細いことであろうと思われると、妹がかわいそうになりました。 「せめて、いつまでも妹の身につくものを買ってやりたい。」と、姉は思いました。 このとき、そばの林の枝にとまって
小川未明
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