小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
あるさびしい海岸に、二人の漁師が住んでいました。二人とも貧しい生活をしていましたから、町や都に住んでいる人々のように、美しい着物をきたり、うまいものをたくさん食べたり、また、ぜいたくな暮らしなどをすることは、思いもよらないことでありました。 二人は、どうかして、もっといい暮らしをしたいものだと思いましたけれど、どうすることもできなかったのです。青い海の面を見つめながら、二人は、そのような幸福になれる日のことばかり考えていました。 「いくら考えたってしかたがないことだ。俺たちは働くより途がないのだ。」と、乙は甲を悟し、自分を勇気づけるようにいいました。 「それはそうだが、このうえ俺たちは働くこともできないじゃないか。」と、甲は、ため息をしながら答えた。 ほんとうに、二人は、雨の降る日も、また風が吹いて、少々波が高いような日でも、船に乗って沖に出て、網を打ったり、魚を釣ったりしたのであります。 なにごとも二人は、たがいに助け合いました。そして、たいていはいっしょに働いていたのであります。けれど、人間の運というものは、まことに不思議なものでありました。こうして、同じ船に乗って、同じく働いても
小川未明
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