小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
日本海の荒波が、ドドン、ドドンといって岸を打っています。がけの上に、一本の松の木が、しっかり岩にかじりついて、暗い沖をながめて、嵐にほえていました。 そこへ、どこからともなく、紅い、いすかが飛んできて、松の木にとまりました。 「松の木さん、なんで、そんなに腹だたしそうにどなっているのですか?」といいました。 松の木は、頭の毛を逆立て、いまにも岩からはなれて、沖の方へ飛んでゆきそうな、いらだたしげなようすをしながら、 「まだ、あの船が見えないからだ……。」と答えました。 いすかには、ただ、それだけ聞いたのでは理由がわからなかった。 「あの船って、どんな船ですか。それにはだれか、あなたのお知り合いの方でも乗っているのですか。」と聞きました。 ぶっきらぼうの松の木は、いすかにくどくど聞かれるのを好きませんでした。なぜなら、自分の心配をひとに話したって、どうなるものでもなく、また、それにかかわりのない他人が聞いても、なんのためにもなるものでないと思われたからです。で、この小鳥を枝から振り落としてしまおうかと思ったが、黒い目をした、りこうそうな顔つきを見ると、そうもできなく、松の木は、ありのまま
小川未明
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