小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
冬の晴れた日のことであります。太陽は、いつになく機嫌のいい顔を見せました。下界のどんなものでも、太陽のこの機嫌のいい顔を見たものは、みんな、気持ちがはればれとして喜ばないものはなかったのであります。 太陽は、だれに対しても差別なく、いつでも、喜んで話し相手になったからであります。ちょうどこのとき、太陽は、ちょろちょろと、白い煙をあげている煙突に向かって、 「このごろは、なかなかお忙しいようだが、おもしろいことがありますか。」と、にこやかに笑って、太陽は聞きました。 煙突は、いつもは、黙って、陰気な顔をしてふさいでいたのですが、このときばかりは、なんとなく、うれしそうにはしゃいでいました。 「おかげさまで、このごろは、毎日おもしろいめをしています。ほんとうに、私は、しあわせでございます。」と、煙突は答えました。 「どんなおもしろいことか、聞かしてくれないか。」と、太陽はいいました。すると、煙突は、つぎのような意味のことをば物語ったのであります。 ――ほんとうに私は、どんなに寂しかったかしれない。長い間、みんなは私を振り向いて見てくれるものもなかったのです。私は、終日雨にさらされていること
小川未明
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