小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
松林で、聞きなれた鳥の声がしました。窓をあけると、やまがらやしじゅうからが、枝から枝をつたって鳴いていました。 「僕のにがしたやまがらではないかな。」 少年が、じっとその姿を見ていました。遠い町で逃がしたのが、どうして、ここまで飛んでこられよう、と思いました。 戦争のさいちゅうで、もし家が焼けたら、かごの中の鳥がかわいそうだといって、自分はかわいいやまがらを逃がしたし、友だちも、おなじ日に、べにすずめを逃がしたのでした。 「君のべにすずめは、南の国へ飛んでいくし、僕のやまがらは、北のふるさとへ帰るだろう。」 二人はよろこんで、飛んでいった小鳥を見送ったのでした。 少年は、それからまもなく、お祖父さん、お祖母さんのすんでいられる田舎へ、疎開しました。この古いお家で、お父さんが子供のとき、本を読んだり、字を書いたりなさったのだろう。またお祖父さんは、 「これから、いろいろの鳥が、裏の林へくる。雪が降ると、山鳥もうさぎもくる。そうしたら、捕ってやるぞ。」といわれました。 青々とした木々の葉が、いつのまにか、みごとに赤く、黄色くいろづきました。すこしはなれた畑には、かきの実がたくさんなっていた
小川未明
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