小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
いまでは、いい薬がたくさんにありますけれど、まだ世間が開けなかった、昔は、家伝薬などを用いて病気をなおしたものであります。 この話も、その時分のことで、雪の降る北の国にあったことでした。 おじいさんは、働いて、たくさんのお金をおばあさんに残して、先へこの世の中から去ってしまった。後に残されたおばあさんは、独りさびしく暮らしてゆかなければなりませんでした。 おじいさんとおばあさんの間には、ただ一人の子供もなかったのです。おばあさんは、おじいさんの残していってくれた、たくさんのお金がありましたから、なに不自由なく暮らしていくことができました。 しかし、おばあさんもまたしあわせな人ではありませんでした。ふと目を患って、それがだんだん悪くなって、ついに両方の目とも見えなくなってしまったのです。 おばあさんの家に、一匹の黒ねこが飼われていました。このねこは、おばあさんが病気にならない時分に、ある日のこと、犬に追われて裏の高いすぎの木に逃げてきて上がったのでした。 「あのねこを殺してしまえ。」と、村の子供たちは、犬にけしをかけて木の下にやってきました。そしてねこを目がけて石を投げつけたり、棒を持っ
小川未明
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