小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
お嬢さんの持っていましたお人形は、いい顔で、めったに、こんなによくできたお人形はないのでしたが、手もとれ、足もこわれて、それは、みるから痛ましい姿になっていました。 けれど、お嬢さんは、そのお人形に美しい着物をきせて、本箱の上にのせておきました。かわいらしい顔つきをしたお人形は、いつでもにこやかに笑っていました。そして、あちらに、かかっている柱時計を小さな黒い目でじっと見つめていたのです。 お人形には、このお嬢さんのへやのうちが、広い世界でありました。まだ、これよりほかの世の中を見たことがありません。それでお人形は、満足しなければならなかったのです。なぜなら、このへやは、住みよくて、そして、ここにさえいれば、まことに安心であったからでありました。 「どうか、いつまでもここに置いてくださればいい……。」と、お人形は、思っているようにさえ見えました。 ほんとうに、平常は、そんな不安も感じないほど、このへやの中は平和で、お嬢さんの笑い声などもして、にぎやかであったのです。 ある日のこと、お嬢さんは、本箱の中をさがして、なにかおもしろそうな書物はないかと、頭をかしげていましたが、そのうちに、気
小川未明
翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。