小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
お正月でも、山の中は、毎日寒い風が吹いて、木の枝を鳴らし、雪がちらちらと降って、それはそれはさびしかったのです。 「ほんとうに、お正月がきてもつまらないなあ。」と、からすは、ため息をつきました。 「町の方はにぎやかなのだろう。ひとつ出かけてみようかなあ。」と、しばらく木の枝に止まって、考えていましたが、そのうちに、そう心にきめて、遠い町の方をさして飛んでゆきました。 どこを見ても、雪の野原で真っ白でした。だんだん町が近づくにつれて、道の上に人通りが多くなりました。雪道の上を歩いていくものもあれば、そりに乗っていくものもあります。 また、お正月のご馳走を造るために、魚を運ぶそりもあれば、みんなの喜ぶみかんや、あるいは炭や、薪のようなものや、塩ざけなどを積んでいくそりも見受けられたのでありました。 欲深なからすは、なにを見てもほしいものばかりなので、もしや、このあたりになにか落ちていはしないかと、あたりを見まわしながら、あっちの木、こっちの木とうろうろ飛びまわっていました。 すると、町からすこし離れたところに森があって、そこに一軒のりっぱな家があり、煙突から煙が上っていました。からすは、そ
小川未明
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