小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
人というものは、一つのことをじっと考えていると、ほかのことはわすれるものだし、また、どんな場合でも、考えることの自由を、もつものです。 ある日、清吉は、おじさんと町へ、いっしょにいきました。そして、おじさんが用たしをしている、しばらくの間、ひとり、そのあたりをさんぽして待つことにしました。一けんの店では、いろいろの運動器具をならべ、のきさきに写真などをかけていました。すべてスポーツにかんするもので、ちょうど盛夏も近づいたから、山岳の風景や、溪谷、海洋のけしきなどが、目にもしたしまれたのであります。 そのなかの一枚は、のこぎりのはをたてたような、山脈の姿であって、もっとも高いいただきには、雪が白くのこっていました。おそらく、夏の間じゅう、とけることなく、あたらしい雪が、またその上につもるのでありましょう。そのほかの山も、一つ、一つ、個性があって、あるものは、なんとなく近づきがたく、あるものは、なつかしみのもてるようなものがありました。とはいうものの、どれもここからはとおいかなたにあり、いったとしても、のぼるのは、よういではなかったのです。 想像するに、一日じゅう、つめたいきりがかかったり
小川未明
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