小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
どこからともなく、爺と子供の二人の乞食が、ある北の方の港の町に入ってきました。 もう、ころは秋の末で、日にまし気候が寒くなって、太陽は南へと遠ざかって、照らす光が弱くなった時分であります。毎日のように渡り鳥は、ほばしらの林のように立った港の空をかすめて、暖かな国のある方へ慕ってゆきました。 爺は破れた帽子をかぶっていました。そして西洋の絵にある年とった牧羊者のように、白いあごひげがのびていました。子供は、やっと十か十一になったくらいの年ごろで、寒そうなふうをして爺の手を引いて町の中を歩きました。爺は胡弓を持って、とぼとぼと子供の後から従いました。 その町の人々は、この見慣れない乞食の後ろ姿を見送りながら、どこからあんなものがやってきたのだろう。これから風の吹くときには気をつけねばならぬ。火でもつけられたりしてはたいへんだ。早くどこかへ追いやってしまわなければならぬ、といったものもありました。子供は毎日爺の手を引いて町へ入ってきました。そして戸ごとの軒下にたたずんで、哀れな声で情けを乞いました。けれど、この二人のものをあわれんで、ものを与えるものもなければ、また優しい言葉をかけてくれるも
小川未明
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