小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
あるところに、性質のちがった兄と弟がありました。父親は死ぬときに、自分の持っている圃を二人に分けてやりました。 兄はどちらかといえば、臆病で、働くことのきらいな人間でありましたが、弟は、どうかして自分の力で働いて、できるだけの仕事をしたいものだと、日ごろから思っていました。 いよいよ父親がなくなってしまいますと、二人は、これから自分で働いて、生活をしなければならなくなりました。あるときのこと、弟は兄に向かって、 「兄さん、私は、お父さんが分けてくだすった圃を売って、その金を持って旅に出て、なにか仕事をして働きたいと思いますが、兄さんはどうなさいますか。」といいました。 兄は、黙って考えていました。 「どうするって、俺には、べつにいい考えがないから、当分こうしているよりしかたがない。おまえは、かってにするがいいが、その金をなくしてしまったら、どうするつもりだ。」と、兄はいいました。 「兄さん、私は、とにかく思ったことをやってみます。そして、その金をなくしてしまったらまた働いて、体をもとでに、つづくかぎりやってみます。」と、弟は答えました。 弟は、ほどなく、その自分に分けてもらった土地を売
小川未明
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