小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
学校から帰りの二少年が、話しながら、あまり人の通らない往来を歩いてきました。 「清ちゃん、あのお庭に咲いている赤い花はなんだか知っている?」と、一人が、立ち止まって垣根の間からのぞこうとしたのでした。 「孝ちゃん、花じゃない、赤い葉鶏頭だよ。」 「ちょっと見ると、花みたいだね。」 「孝ちゃん、この門は古いんだね、ここについているのは、呼び鈴だろう。」 「呼び鈴だけど、きっときかないんだよ。」と、孝二がいいました。 「どうして? 押せば鳴るんだろう。」 「だって、線がついていないじゃないか。」と、孝二が、あたりを見まわしていました。 「押してみようか。」 「もし、人が出てきたら、どうするの。」 「逃げようよ。」 二少年はそんなことをいって、顔を見合って笑いました。 「孝ちゃん、お押しよ。」 「清ちゃん、お押しよ。」 「よし、押してみようか……。」と、清吉が、脊伸びをして、ボタンに指をつけようとすると、孝二は、はや逃げ腰になっていました。 「孝ちゃんずるいや、いっしょに逃げようよ。」 そういって、清吉は、白いボタンを押したのですけれど、なんのてごたえもありませんでした。 「だれもこないよ。
小川未明
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