小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
甲と乙の二つの国は、隣り合っているところから、よく戦争をいたしました。 あるときの戦争に、甲の国は乙の国に破られて、乙の軍勢は、どしどし国境を越えて、甲の国に入ってきました。甲の大将は、とても正当の力では乙の軍勢を防ぐことができない、そうして降参しなければならないと思いましたから、これはなにか策略を巡らして、乙の兵隊や、大将どもを殺してしまわなければならぬと考えたのであります。 そこで、乙の軍勢が、甲のある小さな町を占領したときに、甲の大将は、すっかりその町の食物を焼き払って、ただ、酒と水ばかりを残しておきました。そうして、その酒と水には、ことごとく毒を入れておきました。大将は、敵がきっと腹を減らして、のどを渇かしてくるにちがいない。そのとき、食物がないから、きっと酒を飲み、水を飲むにちがいないと思ったのです。そうして、この町から逃げてゆきました。 はたして、乙の軍勢はえらい勢いでこの町を占領しましたけれど、食物がありません。みんなは腹が空いてのどが渇きますものですから、大将はじめ兵士は、いずれも酒を飲み、水をがぶがぶ飲んだのであります。すると、急に腹が痛みだしてきて、みんなは苦しみは
小川未明
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