小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
学生の時分、暑中休暇に田舎へ帰って、百姓に接したときは、全くそこに都会から独立した生活があったように感じられたものです。 彼らの信じている迷信というものも、その人たちにとっては、不調和ということがなく、却って、そこに営まれつつある生活が、都会における物質的な文明から独立して、何ものか深い暗示と一種の慰藉を人生に与えるもののごとく感じられたのでした。 それは原始的にも神を怖れ、信じ、また忍従するものであって、やがてその精神は、相互扶助の道徳を生み、生長のいかんによっては、自治体をすら造らるべきものであったに相違なかったのです。 殊に今日田舎へ帰って見た時に、いっそう、当時が追懐されてなつかしさを覚えられたほど、いまは全く様子が変わってしまったのでした。それは、都会からずっと離れている処ならばいざ知らず、日に幾回となく汽車が通過して、そのたびに都会から流行品や、新聞、雑誌のようなものは勿論、また人間が降りたり乗ったりするのでは、常識的に考えても、田舎がいつまでも田舎の面目を保たれるということがない。 一国の景気、不景気は、中心の大都会も、田舎の小都市もほとんど同時に波動することからして、思
小川未明
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