小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
東京の町の中では、かいこをかう家はめったにありませんので、正ちゃんには、かいこがめずらしかったのです。 「かわいいね。ぼくにもおくれよ。」といって、学校へお友だちが持ってきたのを三匹もらいました。 そして、だいじにして、紙に包んで、お家へ持ってかえると、みんなに見せました。 「あたし、こわいよ。」と、妹のみつ子がにげだしました。 「私も、はだか虫はきらいです。どうしてこんなものをもらってきたの?」と、お母さんがおっしゃいました。 正ちゃんのほかにはだれも、あまりかいこをかわいらしいというものはありませんでした。 「兄さん、どっかへ持っていってよ。」と、妹がたのみました。 「こんなにおとなしいのに、かわいそうじゃないか。」 「正ちゃん、おとなしいのではないのよ。しっかり紙に包んできたから、よわったんでしょう。」と、お姉さんがいいました。 「おまえ、くわの葉がなくてどうするつもり?」と、お母さんがおっしゃいました。 くわの葉は、正ちゃんが、もうちゃんと野村くんからもらうやくそくがしてありました。野村くんの家はすこしとおかったけれど、かきねに二本のくわの木があって、それをいくら取ってもいいと
小川未明
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