小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
年郎くんは、自分の造った西洋だこを持って、原っぱへ上げにいきました。 原っぱには、木がなかったから、日がよく当たって、そのうえ、邪魔になるものもないので、すこしの風でもたこはよく上がりました。 きよ子さんに、たこを持っていてもらって、年郎くんは、 「いいよ。」と、あちらから合図をして、放してもらうのです。風があると、たこはおもしろいように、ぐんぐんと空へ上がるのでした。広い原っぱには、おおぜいの子供たちがきて同じように、いろいろの絵だこや、字だこを上げていました。 「僕のが、一番だこだよ。」と、威張っているものもあれば、それに負けまいと思って、糸をどんどん繰り出しているものもありました。 年郎くんは、どうも自分の造った西洋だこが、調子が悪かったのです。尾を長く長くしなければ、すぐにくるくるまわって落ちてしまうし、あまり尾を長くすると、重くて、なかなか上へはあがらないのでした。 「だめよ、年郎さん、こんなに尾を長くしては。」と、とうとうきよ子さんは、しびれを切らして、いいました。 年郎くんは、うらめしそうに空を仰いで、ほかのたこがよく上がっているのをぼんやりとながめたのです。 「あ、あの

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