小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
東京のお正月は、もう梅の花が咲いていて、お天気のいい日は、春がやってきたようにさえ見えるのであります。義雄さんは、隣のみね子さんと羽根をついていました。 みね子さんは、去年学校を出たのでした。きょうはお店の公休日です。叔母さんのお家へいってきたといって、きれいな着物を着ていました。義雄さんは、まだ来年にならなければ、学校を卒業しないのであります。 「いいかい、こんど落としたら罰に、たたくのよ。」 「義雄さんこそよくって。さあ上げてよ。」と、みね子さんは、ポンと羽根をたたきました。打ち方がよくなかったので、羽根が横へそれてしまいました。 「あ、ごめんなさい。」と、みね子さんは、おわびをしましたが、義雄さんは、素早く走って、その羽根を力まかせに打ち返しました。けれど、羽根は、みね子さんの方へはいかずに、往来の方へ飛んでゆきました。ちょうど、そのとき一台のトラックが走ってきましたが、羽根は、そのトラックの上の荷物の蔭に落ちて、トラックは、知らずにそのまま羽根をのせてかなたへいってしまいました。 「いいよ、僕、新しい羽根を持ってくるから。」という義雄さんの声を、トラックの上に乗ってしまった羽根
小川未明
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