小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
あるところに、かわいそうな乞食の子がありました。 さびしい村の方から、毎日、町の方へ、ものをもらいに追い出されました。けれど、小さな足には、なにもはくものがなかったのです。子供は跣足で、長い石ころの多い道を、とぼとぼと歩かなければならなかったのでした。 夏の暑い日のことであります。地の面は乾いて、石は、熱く焼けていました。しかし子供は、足になにもはくものがなかったので、その上を跣足で歩いていました。通りすがりの人たちは、このかわいそうな乞食の子を見ましても、やさしい声ひとつ、かけてくれるものはありませんでした。 乞食の子は、きたならしいふうをして、だれも通らない、日盛りごろを往来の上を歩いていたのです。すると、頭の上で、つばめが鳴いていました。電信柱が往来に沿って、あちらまで遠くつづいていました。そして、その先は、青い、青い、空の下に見えなくなっていました。 その柱と柱の間には、幾筋かの電線がつながっていました。そして、その細い電線は日にさらされて光っていました。 つばめは、幾羽となく並んで、電線に止まっています。そして、鳴いていました。乞食の子は、ふと思わず立ち止まって上を仰ぎますと
小川未明
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