小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
ある街に、気むずかしいおじいさんが住んでいました。まったく、独りぽっちでおりましたけれど、欲深なものですから、金をためることばかり考えていて、さびしいということなど知りませんでした。 「おじいさんは、おひとりで、おさびしくありませんか?」と、独り者のおじいさんの身の上を思って、なぐさめるものがあると、 「仕事にいそがしいから、そんなことは考えませんよ。」と、おじいさんは、さびしいとか、さびしくないとかいうのは、閑人のいうことだとばかりに返事をしました。 「それは、お元気で、なによりけっこうなことです。」と、たずねた人は、金がもうかれば、さびしくないものとみえる、さすがに、金持ちはちがったものだと思いました。 おじいさんは、雇い人を手足のごとく使いました。雇い人たちは、おじいさんの気むずかしやを知っていますから、せっせといいつけどおり働いたのです。そして、自分の思ったように物事がうまくゆけば、にこにことして、おじいさんは、きげんがよかったけれど、うまくゆかないときには、 「おまえは、気がつかん、ばかだから。」といって、がみがみしかったのであります。 雇い人は、たまりかねて、 「あんなわか
小川未明
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