小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
北の方の町では、つばめが家の中に巣をつくることをいいことにしています。いつのころからともなく、つばめは、町の人々をおそれなくなりました。このりこうな鳥は、どの家が、朝早く起きて、戸を開けるか、またどの家には、どんな性質の人が住んでいるか、また、この家は、規律正しいかどうかということを、よく見ぬいていました。それでなければ、安心して、家の中に、巣はつくれなかったからです。また、大事な自分たちの子どもをも育てられなかったからです。 つばめのいいと思った家は、ほんとうにいい家であったから、巣をつくるのは、無理もなかったのでしたが、もう一つこれには、町の人が、なぜこんなにつばめを愛するかという話があります。 それは、昔のことでした。この海岸に近い町の人々は、船に乗って、沖へ出て漁をしていました。 ある日のこと、幾そうかの船は、いつものごとく青い波間に浮かんで、漁をしていたのです。すると、天気がにわかにかわって、ひどい暴風となりました。いままで静かであった海原は、さながら、白くにえかえるようになり、風は、吹きに吹きすさみました。たちまち、幾そうかの船は、くつがえってしまった。そして、その中の、た
小川未明
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