小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
昔は、いまよりももっと、松の緑が青く、砂の色も白く、日本の景色は、美しかったのでありましょう。 ちょうど、いまから二千年ばかり前のことでありました。三保の松原の近くに、一人の若い舟乗りがすんでいました。ある朝のこと、東の空がやっとあかくなりはじめたころ、いつものごとく舟を出そうと、海岸をさして、家を出かけたのであります。 まだ、おちこちの森のすがたは、ぼんやりとして、あたり一面の畑には、白いもやがかかっていたけれど、早起きのうぐいすや、やまばとは、もうどこかでほがらかに鳴いていました。そうして、あちらの空には、富士山が、神々しく、くっきりと浮かびあがって見えました。 これを仰ぐと、若者は、つつましげにえりを正して、手を合わせながら、 「どうぞ、今日も私のからだに、けが、さいなんなく、おかげで、しあわせにくらせますように。」と、いいました。 こう祈りをささげると、なんとなく心がすがすがしく、気もちもはればれとして、しぜん、ふみ出す足に力が入りました。 このとき、どこからともなく、ぷんと松のにおいがしました。いつのまにか、松原へさしかかっていたのであります。木の間から、びょうびょうとして見
小川未明
翻訳状況
待機中ログイン後に翻訳をリクエストできます。
よくある質問
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
無料でご利用いただけます
会員登録なしですぐに読み始められます。さらに多くの書籍と機能は無料会員登録後にご利用いただけます。