小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「なにか、楽しいことがないものかなあ。」と、おじいさんは、つくねんとすわって、考え込んでいました。 こう思っているのは、ひとり、おじいさんばかりでなかった。町の人々は思い思いにそんなことを考えていたのです。しかし、しあわせというものは、不幸と同じように、いつだれの身の上へやってくるかわからない。ちょうど、それは風のように、足音もたてずに近づくものでした。また、だれもかつて、しあわせの姿というものを見たものはなかったでしょう。 こうして、たくさんの人たちが、てんでに自分の身の上にしあわせのくるのを待っていました。 「しあわせは、いま、どこを歩いているかしらん……。そしてだれのところへ、やってくるかしらん……。」 こう考えると、まったく、不思議なものでした。そして、このしあわせにも、大きなしあわせと小さなしあわせとあったことは、むろんです。けれど、ダイヤモンドは、いくら小さくても美しく、光るように、それが、たとえ、小さなしあわせであっても、その人の一日の生活を、どんなにいきいきとさせたかしれません。 おじいさんは、なにか楽しいことがあるのを待っていました。いつものごとく火ばちにあたって考え
小川未明
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