小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
昔、ひすいが、ひじょうに珍重されたことがありました。この不思議な美しい緑色の石は、支那の山奥から採れたといわれています。そこで、国々へまで流れてゆきました。 その時分の人々は、なによりも、真理が貴いということには、まだよく悟れなかったのです。そして、ひすいの珠をたくさん持っているものほど偉く思われましたばかりでなく、その人は、幸福であるとされたのであります。 ふじの花咲く国の王さまは、どちらかといえば、そんなに欲深い人ではなかったのでした。けれど、妃は、たいそうひすいを愛されました。 「私は、じっと、この青い色に見入っていると、魂も、身も、いっしょに、どこか遠いところへ消えていきそうに思います。」とおっしゃいました。 王さまは、妃をこのうえもなく愛していられましたから、自分はこの石をさほどほしいとは思われなくとも、妃の望みを十分にかなえさせてやりたいと思われました。 「いくら高くてもいいから、いいひすいの珠があったら持ってまいれ。」と、家来に申しわたされたのです。 ある日、家来の奉った珠を王さまは、手に取ってながめられ、なるほど、美しい色をしている。どうして、このようなみごとなものがこ
小川未明
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