小川未明 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
風の出そうな空模様の日でありました。一ぴきのせみが、小さなこちょうに出あいました。 「なんだか怖ろしいような空模様ですね。今夜はあれるかもしれません。早く家へ帰りましょう。」と、せみはいいました。 正直なこちょうは、空を見上げて、 「ほんとうに暗くなりました。あんなに雲ゆきが早うございます。早く家へ帰りましょう。」と答えました。 そこで、ふたりは、風に吹かれながら空を飛んできましたが、小さなこちょうは、おくれがちなので、せみはもどかしく思いました。 「こちょうさん、あなたのお家はどこですか。」とききました。 「私の家は、あちらの花圃です。あすこには姉も妹もきて待っています。」と答えました。 「あんな頼りのない花圃なんですか、今夜の大風をどうして、あんなところで防ぐことができますか。」と、せみはあきれたような顔つきをしていいました。 こちょうは、また空を見上げました。ますますものすごく空の景色はなっていくばかりです。 「あなたのお家は、どこですか。」と、こちょうはせみにたずねました。 「私の家ですか。それは大きな木です。もうすこしいくと、その木が見えるはずです。こんもりとしげっていて、風
小川未明
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